その他施工実例

2019.03.13 / その他施工実例ナチュラルだけどレトロ感のあるお洒落な一戸建リノベ

今回の作品も物件探し〜ご購入〜リノベーションまでの全工程をご依頼いただきました。

 

まず最初にお施主様がご希望されているの物件のご要望をお伺いしていてイメージしたのは古い味のある木造建物でした。それもどちらか言うと“町家”と言うよりも“洋館”のようなイメージを持って物件探しを始めました。しかし探し出すとなかなかそのような物件はありませんでした。そんな時に今回の作品となる物件をご覧いただきました。決して古い建物ではありませんでしたが、建物を建てられた方の思いが感じられる独特の建築様式で建てられた建物でした。これはのちに解ったことですが、売主様が設計士さんで新築当初には雑誌にも載ったことがある建物だったんです。

 

そのような建物であることからお施主様が大変気に入られてご購入が決定しました。しかしこの建物は容積率が厳しい地区に建っており、購入に際してはリノベーションで減築することが条件となりました。当初はこの建物の良さである広い床面積を狭くするのはマイナスであると言うような感じで捉まえてのスタートになりました。しかし結果としてその思いこみを逆転する空間へとリノベーションさせていただきました。

 

また、リノベーションに際してはお施主様のご要望が明確にあり、味のある古い素材感を活かした商品を採用することやヴィンテージ感のある空間にすること、決して作りすぎず古い味を残すことそして出来る限り使えるものは使うことなどでした。そのようなことから棚板にいつもの素材をやめ足場板を用いたり、既存のドアをドアノブだけを交換して採用したり、2階のフローリングをそのまま活かしたり、塗装をする際に元からある下地を活かして出来るだけ粗く塗装したりと、今まで当社でさせていただいていたようなまるごとリノベーションで一新すると言うコンセプトではなく、上手く素材を使い分けるリノベーションならではの仕上げをさせていただくようにしました。もちろんそうすることでコストも抑えることができると言うメリットもありました。

 

ただ今回減築するとは言っても元々の延床面積が相当あることから全体をリノベーションするとコストが嵩むと言う事がありお施主様のご要望も明確なことからそれらを全て叶えることがコスト的にも難しいということもありました。また当初はサッシも取替えを希望されていましたがコストの兼ね合いで断念されたという経緯もありました。ただどうしてもお施主様のイメージに現状のサッシの色があわないということで塗装出来ないかというご要望がありましたが、一般的な塗料はサッシに塗ってもすぐに剥げてしまうことから難しいということがあり、いい方法がないか検討しておりましたところたまたまネットで見つけたドイツ製の塗料がサッシに塗れると言うことが解り採用させていただきました。もちろんこの塗料も決してローコストでは無いのですが、サッシを取替えることを考えれば断然ローコストで仕上がりますし一般的な塗料とは違い剥がれる可能性も低いことやお施主様のイメージにピッタリな商品であったことからも採用いただきました。また玄関ドアや照明器具などもお施主様の好みを活かせるように施主支給にしていただきました。

 

そのような過程を踏まえて出来上がった今回の作品は、もともとの個性的な建築様式で日常的には使いにくい動線を解消し使いやすくするために土間であった玄関部分には無垢フローリングそして中庭にはウッドデッキを敷きつめました。このようにすることで建物内部と中庭の一体感を高めて広々とした空間としてお使いいただけるようにリノベーションさせていただきました。そして何と言っても減築しなくてはいけないために2階の床を取り除き、その部分の梁を活かして吹き抜けをとった空間に広げたことで減築して実際には床面積は減りましたが、それを全く感じさせないどころか本来この方が正当であるかのように立体的な広々とした空間を造ることができました。

 

そしてこれからこの建物が経年することで当初お施主様がお探しであった洋館のような佇まいを醸し出していくのではないかと思っております。それには5年10年という短いスパンではなく20年30年と言う月日を重ねていくことで味のでるリノベーションになったのではないかと思っております。そして最後に今回の作品名は「life」です。お施主様にネーミングいただきました。理由は、「山々に囲まれ、川のせせらぎ音が聞こえる地にあった旧い住居が、その豊かな自然環境から溢れる“生命”と調和するような形で“日常生活”を営む空間に再生された」と言う意味合いです。すごくシンプルですが深い言葉です。まさに今回リノベーションさせていただいたお施主様のリノベーションイメージにピッタリなネーミングだと思いました。

 

そして本作品もお施主様にお住まいいただき、落ち着かれた頃にお伺し、どのようにお住まいいただいているかを拝見するのが大変楽しみなリノベーション作品となりました。そして経年変化と言う意味からも出来れば20年後ぐらいにお邪魔させていただきその深まった味わい深い空間を感じてみたいと思うリノベーション作品になりました。

 

■物件概要/1988年新築(築後23年)・京都市左京区・個人住宅リノベーション・延床面積157.10m²・構造:木造スレート葺2階建

 

■壁面:PB下地の上AEP塗装仕上(一部シナベニア下地)・天井:PB下地の上AEP塗装仕上(一部シナベニア下地)・床材:パイン無垢フローリング(塗装仕上)・バスルーム:INAX製ユニットバス・シェルフ、クローゼット、建具:シナOSCL塗装仕上・キッチン:モザイクタイル囲いの上、ナラ面材カウンター、INAX製システムキッチン・便器:INAX製アメージュC・その他:ドアノブ、取っ手にアンティーク金物使用等・棚板:足場板・ガラス:ペアサッシ

 

■リノベーション期間/約2ヶ月(解体工事期間含む)