その他施工実例

2019.03.13 / その他施工実例オリジナルの建具を効果的にデザインに取り入れコストダウン “和テイスト”の空間

今回は千本今出川に位置する総戸数400戸超えの大型分譲マンションの一室のリノベーションでした。このお施主様も「中古購入×リノベーション」のケースで、物件をお探しの段階からご相談頂いておりましたが、結果的にご購入自体は他社でされましたので、弊社としては主にリノベーションの部分に携わらせて頂きました。

 

ご購入時のお部屋の状況は、恐らく30数年前の時点から一度も改装等を施されていないであろう状態で、良く言えばリノベーション向きではありましたが、相当に古く、お世辞にも美しいと言える状態ではありませんでしたので、ご決断に際しては結構思い切られたのではないかと思います。
しかし、高層階ならではの景観が素晴らしく、大文字も一望できるお部屋からの眺望を拝見させて頂き“なるほど”とご決断されるに至った理由に納得しました。

 

建物全体としては、京都のマンションの中でも比較的古い部類に入るもので、リノベーションに際しても、古いが故のマンション側の制約が色々とありましたが、収納庫や牛乳受けが共用部の廊下に各戸専用にあったりなど、最近のマンションでは見かけることのない、どことなくユニークな施設が、時間の流れをゆったりと感じさせる、古き良き和やかなコミュニティを物語っている様な感じがしました。

 

リノベーションに際してのお施主様のご要望は、元のお住まいが京町家で、家具類も味のある骨董の和のもので揃えておられることから、全体的に和テイストでまとめることと、お仕事柄たくさんの蔵書を持っておられることから、壁面全体に大きな本棚を設えること、そして間取りついては元々閉鎖的に仕切られていた4DKを、開放感のある1LDKのゾーニングすることでした。
その他にも、バスルームをタイル貼りの在来工法にして、高級感のある据置式の浴槽にしたいなどのご要望を持っておられましたが、これらについてはマンション側の制約により、ユニットバスでの入替えのみしか対応できない等の理由から断念して頂かざるを得ませんでした。
しかし、そういった制約があったことにより、その分の予算を他の造作費用などに充てることができたため、結果的に全体のコストパフォーマンスは上がったのではないかと思います。

 

和空間の場合には特に、本格的にその意匠や要素を取り入れようとすると、それらの全てが膨大なコストアップに繋がってくるため、元々あった和室の障子に塗装だけを施しそのまま再利用したり、オリジナルの格子建具や和室の天井の竹組みなど、和の要素を効果的にデザインの中に配しながら、お施主様のご予算の範囲内で、リボーンキューブのデザインコンセプトのひとつでもある“禅スタイル”の和空間をご提案させて頂きました。

また今回、リビングルームの床の仕上げをフローリングではなく、市松貼りのタイルカーペット敷きにすることによって、ここでも大幅なコストダウンを図ると共に、フローリングとはまたひと味違った、落ち着きと品格のある佇まいを演出しました。

 

作品名である「Sabi」については、日本の美意識のひとつである“侘び寂び”から名付けました。
“寂び”の意味する「時と共に経年劣化した様子や、古びた様子に美を見出す意識」と言うところが、リボーンキューブのリノベーション全体のコンセプトにも共通するのですが、今回のお部屋のイメージやお施主様のご趣味のイメージにとても合う様な感じがしました。
また、数寄屋の様な完璧な和の設えではなく“禅スタイル”の和空間であることから、敢えてローマ字表記で「Sabi」とネーミングさせて頂きました。

 

■物件概要/1972年6月新築(築後36年)・京都市上京区五辻通浄福寺西入一色町・区分所有マンション・個人住宅リノベーション・床面積60.19m2・構造:RC造11階建

 

■主要各部仕上および素材/壁面:スケルトンAEP塗装仕上(一部モルタルシゴキのうえ塗装)・天井:スケルトンAEP塗装仕上(和室染竹組仕上)・床仕上:タイルカーペット貼り仕上(和室畳敷)・バスルーム:Panasonicユニットバスリノーヴァ・洗面室:シナULCL塗装仕上造付洗面カウンターのうえ床Pタイル貼り仕上・玄関:Pタイル貼り仕上・造作家具:シナOSCL塗装仕上・建具等木部:シナOLCL塗装仕上・和室およびリビング格子(オリジナル格子建具・和室サッシ側障子のみ既存利用)・キッチン:業務用ステンレスキッチン(特注仕様)

 

■リノベーション期間/約1.5ヶ月(解体工事期間含む)