その他施工実例

2019.03.15 / その他施工実例飲食店舗ビルを工房兼住宅へリノベーション

今回は久々の鉄骨造の一戸建リノベーションでした。リノベーション前は和食の飲食店舗ビルとして使用されていた、屋上付3階建の建物で、1階がメイン厨房とカウンター席、2~3階が座敷席で、浴室や居室などの住宅設備が全く無い建物でした。

 

お施主様自身も1階を楽器修理の工房兼店舗として使用できる事を条件に物件を探されていたため、大通りに面したこの店舗ビルがイメージに合われたのだと思います。
前述の通り、お施主様ご自身が“コントラバス”と呼ばれる弦楽器の修理・修復を職業にしておられ、それこそ100年以上も前の楽器を修復されたり、言わば楽器のリノベーションを本職にされている事から、住まいに関しても新築や普通の中古リフォームでは無く、味わいのある「中古購入×リノベーション」を選択されました。

 

※コントラバス ・・・ 主にクラシックのオーケストラ等で演奏される、見た目はバイオリンに似た大きな楽器の事です。ジャズやその他の音楽ジャンルで使われている“ウッドベース”と言う呼び名の方がピンと来るかも知れません。

 

ちなみに実際に見せて頂いた古い楽器も、何度も塗り重ねられて来た塗装の色合いや、絶妙の木目の表情など正にヴィンテージの味がありました。(音の方も古くなるにつれてより深みのある良い音になって来るそうです。)
ただそれでも、決して美しいとは言えない元の和食の飲食店舗の状態からリノベーション後の完成形をある程度頭の中でイメージしてご決断して頂くには、かなりの思い切りを必要とされた事と思います。

 

ご購入自体は他の不動産会社でされたのですが、物件の下見の段階から建物そのものの現状や問題点の有無を始め、どの程度の予算でどの様なリノベーションが出来るのか等々の細かな点までご相談を頂き、お施主様と一緒に実際に建物の内覧等、事前確認もさせて頂いておりましたので、リノベーションの打ち合わせを始め、実際の設計や施工にも大きなズレが無く進めて行くことが出来ました。

 

リノベーション前は、内外装ともに完全な和風で、1階のカウンターと厨房以外は殆ど畳で、壁面も聚楽色の飲食店仕様だったので、内装については鉄骨の階段を残す以外はスケルトン状態まで解体し一からゾーニングをし直しました。

 

今回デザインに関しては特にテーマの様なものはありませんでしたので、1Fを工房兼店舗にされる事を始めとして、雑誌切り抜きやイメージ写真を見せて頂きながらご希望のテイストや間取構成、マテリアル等々をお伺いし、リボーンキューブのデザインテイストを織り込んで打ち合わせを進めて行きました。

 

ただ、建物の規模がそこそこ大きい店舗併用住宅であるため、外壁も屋上もあそこもここも、と範囲を広げて行くとどうしても予算が膨らんで行ってしまう事から、外観的にはファサードのみに限定し、その他の外壁や屋上など現時点でどうしても補修等の必要のない箇所については基本的には手を付けず、内装に関しても2Fのリビングルーム以外は必要最小限にシンプルにと、お施主様にもご協力を頂きながら打ち合わせを重ね、プランを固めて行きました。

 

こうした打ち合わせと見積りの過程を経て行く中で、お施主様自身にも本当に必要で実現したい事とそうでない事、どうしても今しなければならない事と将来でも良い事等々を改めてご確認頂きながら、過剰なムダを削ぎ落とした、よりシンプルでカッコいい、リノベーションならではの空間を創る事が出来たのではないかと思います。

 

特に一番始めの段階から、こだわりの素材としてご要望頂いていたローズウッドのフローリングが、とても味わいのある表情でイイ感じに空間を印象づけていると思います。これから先も経年変化を重ねて行く中で、楽器と同様に更に味わいやヴィンテージ感のあるものになって行くのではないかと思います。

 

作品名である「BASE」については、結構早い段階から決まっていました。響きの通り“コントラバス”や“ウッドベース”の「BASS」からネーミングさせて頂きました。が、もう少し思い入れをお話しさせて頂くと、この楽器自体が前述の通り、元々はクラシックで演奏されていた楽器なのですが、奏でられる奥深い低音の音色と存在感のある独特のスタイルから、現在ではジャズ・ポップス・ロカビリー・カントリー等々の様々な音楽ジャンルで愛されており、実際にお施主様のところへ修理に持って来られるお客様も、様々な立場・スタイル・音楽ジャンルの方々だそうです。

 

プロもアマチュアも社会人も学生さんもクラシックもジャズもポップスもロカビリーもカントリーもetc・・・立場もスタイルもジャンルも違うけれど、同じ楽器を愛しているミュージシャン達の交流の場、情報発信の拠点にして行きたい、との思いをお聞かせ頂き、その「拠点・基地」の意味も込めてネーミングさせて頂きました。

 

■物件概要/1979年7月新築(築後29年)・京都市北区紫野・一戸建・個人住宅リノベーション・延床面積144.12m2・構造:鉄骨造陸屋根3階建

 

■主要各部仕上および素材/壁面:PB下地AEP塗装仕上(3Fのみクロス貼り仕上)・天井:PB下地AEP塗装仕上(2FのみスケルトンAEP塗装仕上)・1F床材:無垢ボルドーパインフローリング着色オイルフニッシュ仕上・2F床材:無垢ローズウッドフローリングオイルフィニッシュ仕上・3F:パイルカーペット貼り・洗面室:シナULCL塗装仕上造付洗面カウンターのうえ床Pタイル貼り・浴室:TOTOバスピアシステムバス・玄関:カラークリート土間仕上・造作家具:シナOSCL塗装仕上・建具:シナOLCL塗装仕上(一部アンティークモザイクガラスはめ込み)・キッチン:施主様支給IKEAシステムキッチン・ファサードデザイン:オリジナルサンメント框ドア(店舗入口アンティークモザイクガラスはめ込み)、正面壁面ジョリパッド仕上(ガラスブロックはめ込み)、黒革スチール抜文字サイン・その他:階段踏板タモ集成材OSCL塗装仕上、オリジナル木製手摺、店舗入口シャッター

 

■リノベーション期間/約2ヶ月(解体工事期間含む)