その他施工実例

2019.03.12 / その他施工実例RC造のアーティスティックでレトロモダンな味わいのあるビルを1棟フルリノベーション

今回のお施主様はかなり以前からご相談をいただいておりましたがなかなか物件が見つからずにずっと探しておられ、やっとご希望に叶う物件をご自分で見つけられたためにリノベーションからお手伝いをさせていただくことになりました。
今回の建物はRC造りの4階建のビルでしかもその当時かなり個性的(今でも個性的ですが)な建物であったろうと推測する造りでした。実はこの建物はリボーンキューブの事務所の近くということもあり以前より前を通るたびにこんな建物をリノベーションしたみたいとなぁ〜と密かに思っていた建物だったんです。それだけに内覧をさせていただいた時はかなり興奮したのを覚えております。では早速どのようなリノベーションをさせていただいたかを含めて順にご説明していきたいと思います。
まず最初にご説明したとおりRC造りの4階建のビルで建物の前後で階層が段違いになっておりそれを真ん中の階段で繋げているようなスキップフロア形状になっておりました。そして現状は全室が事務所仕様になっておりましたのでお施主様もこの建物がはたして実際に住まいになるかが半信半疑に思われていたところもありました。そしてこの建物をお施主様のご希望として自宅兼お菓子教室兼パティスリーにされたいということでご依頼をいただきました。ですがまずはそれらのご要望の中から自宅とお菓子教室とに照準を絞ってリノベーションすべく打ち合わせを重ねました。

 

お施主様が建築に明るくお好きで詳しいこともありご要望がかなり明確であったことから数多くお持ちだったのでご要望を整理しながらカタチにさせていただくことから始めました。例えば、基本室内は全て白で統一するということやパリのアパアルトマンのような空間にしたいということ、また自宅部分のキッチンのレイアウトや使う素材、その他の部屋についてもどの部屋をどんな感じで使いたいかというイメージやカラーなどをきちんとお持ちでした。
お菓子教室とその生徒さんがくつろがれるサロンについてのレイアウトも同じように使う素材やゾーニングなどのイメージをお持ちだったのでそれらをひとつひとつ聞き取りさせていただきバランスよくデザインし、そしてそれらを図面に落とし込んでいくというような作業をさせていただきました。リボーンキューブに相談される前に他の設計士さんにかなり具体的に相談されていたようで余計にその辺のイメージを明確にお持ちだったのではないかと思います。
お施主様のご要望を反映した図面を作成していくと今までに例をみない量の図面になり軽く厚手の単行本並みに積み重なりました。もちろん一棟なので室内のリノベーションだけではなく外部や屋上なども含めて全体を図面にしないといけなかったからでもあります。それらを纏め上げて何度も打ち合わせを重ねようやく見積が取れる状態にまで煮詰めることができましたがいざ見積を取るとやはり予想通りかなりの予算オーバーだったため再度打ち合わせを重ねできる限り削ぎ落とし、なんとか予算に合うところまで持って行くことができました。その頃にはお施主様が思われていたタイムリミットギリギリの状態になっていました。
そしてようやく工事に着工できる状態になったのですが、新築当時に建物を敷地いっぱいに建てられていたこともあり隣接の方の敷地内に足場を立てさせていただかないと工事が進まないという状況がありそのご了承をいただくのに一苦労することなどがあったり、一棟建物ならではの苦労もありましたがなんとか無事に工事を進めることができ、お施主様の思われていたタイムリミットギリギリになんとか間に合わせることができました。そんないろいろな思いをさせていただき出来上がった時には本当に感無量な思いがしました。

 

ではもう少し詳細にリノベーションの内容をご説明します。
まず2階の表側はお菓子教室に設えるべく大きな大理石のカウンターを持つ作業台とお菓子作りに使う細々した道具類が収納できるようにし、壁側の一面はオーブンを6台とり収納を充実させました。またもう一面は5m強あるロングなキッチンを設え、業務用の冷蔵庫や食洗機が収まるようにIKEAで収納部をレイアウトし特注のステンレス天板(1枚もの)を取り付けました。壁面はレトロな雰囲気が漂う馬目地の二丁掛タイルを貼り仕上げました。
2階奥のサロンは目隠しを兼ねたガラス張りのパーテーションを配して壁面にはローボードを設えました。これらの空間を白色で統一するというご要望がありましたのでできる限り他の色は入れず、床面だけをサロンはオーク無垢フローリングとし教室は同系色の木目調タイルでスッキリと仕上げました。

 

自宅部分は3階の表側はLDKとして壁面にキッチンをとり、その両脇に収納を配しました。この収納に用いた金具がお施主様たってのご要望で開く収納ですが閉まった状態はフラットにできる特殊な金物を採用しております。
キッチン部分のカウンター天板にはコーリアンを貼りすっきりと仕上げました。そのカウンターの上部にお施主様が数年前に購入されてずっと眠っていたバカラのペンダントを取り付けさせていただきました。
3階の奥側はお子様の寝室と書斎をとり、4階の奥側には主寝室と在来工法で50角のモザイクタイルを張った明るい洗面と浴室をとりました。
自宅部分は全室、壁と天井に珪藻土を塗って仕上げました。
広い屋上は全面ウッドデッキ張りに仕上げ使いやすく将来的に屋上を緑化されたいというご要望でしたので緑が映える設えにしました。

 

1階は表側にパティスリーを造る計画のため現状のままとし、真ん中の吹き抜け部分にシンボルツリーを植えられるように花壇を設けました。その奥は天井高が低いこともあり使いにくいため広い収納スペースとしていろいろなものが仕舞えるようにしました。
外壁は元々黒色だったのですが全て白色に塗り替えました。

 

以上のように一棟まるごと余すところなくリノベーションさせていただき本来の独創的なRC造りの建物の良さを残しつつもお施主様のご要望にあうようにポテンシャルをアップした建物へとリノベーションさせていただきました。このようにリノベーションならではの良さを存分に発揮できた作品に仕上がったのではないかと思っております。

 

今回のネーミングですがお施主様自ら命名いただきました。フランス語で“ MAISON BLANCHE ”です。意味はもちろん今回の作品を見れば一目瞭然ですが“ 白い家 ”という意味です。白にこだわってフランスの街角にありそうな佇まいの建物にリノベーションさせていただいたからです。お施主様はご主人がフランスの方で奥様が日本の方そして小さいお子さんが一人おられるというご家族です。奥様がお菓子教室をされ、ご夫婦ともフランスっぽい感じを好まれ、アンティーク家具がお好きでそれらを多くお持ちということもあり、それらが映える白い空間にされたということです。また今回のお施主様はお引越し後から何度かお邪魔させていただいており置かれている小物やアンティーク家具などのレイアウトセンスの良さに感嘆しております。シンプルな白い空間にそれらが映えてあたかもどこかフランスのお家にお邪魔しているのではと錯覚するほどにすでにみごとに住みこなされてます。
今回のリノベーションもいろいろ難題がありましたがそれらを乗り越えて無事に完成でき、お施主様に気に入ってお住まいいただけているのが何よりうれしいリノベーションとなりましたこと感謝して締めくくらせていただきたいと思います。

 

■物件概要/1978年新築(築後35年)・京都市中京区・個人住宅リノベーション・延面積275.38m²・構造:RC造陸屋根4階建

 

■主要各部仕上および素材/壁面:RC躯体(一部PB)の上AEP塗装仕上、珪藻土仕上・天井:RC躯体の上AEP塗装仕上、珪藻土仕上・床材:オーク無垢フローリング(オスモ塗装仕上)、木目調タイル仕上・洗面、バスルーム:在来工法による50角モザイクタイル貼り、INAX製浴槽、洗面ボウル、テンパーガラス等・シェルフ、クローゼット、建具:シナウレタン塗装仕上・キッチン:モザイクタイル貼り、システムキッチン・便器:INAX製・その他:大理石トップカウンター、照明器具一式(間接照明含む)、コーリアントップカウンター、AEG製オーブン用造付収納家具一式、ガラス入りパーテーション、既存サッシ入替え、マグネット塗装、ウエスタンレッドシダー材ウッドデッキ、外壁ウレタン塗装等

 

■リノベーション期間/約3ヶ月(解体工事期間含む)